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*注意
原作の並行世界パロディ。
雲雀さんが乙女。
なにがあっても
大丈夫な方はスクロールプリーズ。
晴れた日曜日。雲雀はガラスのウィンドケースを睨み付けていた。
唯我独尊。並盛最強にして最凶の風紀委員長。そんな彼には似つかわしいガラスの中の色とりどりのケーキ。雲雀はそれを熱心に見ていた。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
店員の声を聞きつつ、腕を組む。
定番のキラキラの苺のショートケーキ、ふわふわのチーズケーキ、こだわり卵のプリン、期間限定の苺のモンブランも捨てがたい。口の中ではもうすでに、甘い香りが広がっている。
一人で頷き、顔を上げ素気なく答えた。
「チーズケーキとプリンとイチゴのモンブラン、それとショート。」
可愛いものは好きだ。
ふわふわの黄色い鳥。黒蜜がかかった白玉アイスクリーム。そして、少女漫画も。

応接室でいつものように書類に目を通す。最近は学校付近の公園に痴漢がよく出没しているらしい。近々、咬み殺そう。
書類を乱雑に机の上に投げ、ソファーの背もたれに体を沈める。そして深く溜息吐いた。
そして何を考えるわけでもなく、ただ天井のシミを見ていた。
ふと、控え目なノックが雲雀の耳に届いた。
なにも発しないでいると、ドアが勝手に開き草壁が本を数十冊ほど抱えて入ってきた。
「いらっしゃるなら返事ぐらいして下さい」
「要件は?」
机の上の書類をもう一度手にして眺める。
草壁はわざとらしく溜め息を吐き、持っていた本を雲雀に差し出した。
「先ほどの持ち物検査で没収されたものです。いかがなさいますか?」
顔を書類からあげて本を見る。
積み上げられた本。その一番上にはマーガレットの最新号が置かれていた。
メイちゃんの羊の続きが気になる今月号。
見たい。読みたい。ときめきたい。委員長の威厳を保ちつつ、本を手に入れる方法を考えなければ。
目を閉じて一呼吸置いてから、草壁を思いっきり睨み付ける。
「マーガレットだけそこに置いといて 別に僕が読むわけじゃないよ 僕の知り合いの草食動物の友達の外国人がいて その人の部下の娘がそれを欲しがっていたんだ その娘にはちょっとした借りがあるんだよ ハンカチを借りたんだ 可愛いレースの薔薇の香りがするハンカチをね だからそのお返しにマーガレット三月号を渡したいんだ だからテーブルの上に置いて 他はブックオフで売り飛ばしなよ」
息つぎをせずに話して、乱れた呼吸を深く息を吹って、整える。
それから視線を上げれば、草壁は目を見開いたまま、硬直していた。
「なにしてるの?」
雲雀がトンファーを構え、睨み付ければ、顔を青くさせ、残りの漫画本を持ち、そそくさとドアから出ていった。
草壁が去った後、鍵を閉めて紅茶を入れる。
そしてソファーに深々と座り、マーガレットを手に取った。
紅茶を啜り、まず最初に何を読もうかを考える。メイちゃんの羊はイチゴのショートケーキと同じで最後に読むものだ。
紅茶が冷めきってしまった。
とりあえず続きは家で読もう。帰り支度をし学校を出た。
夕陽に照らされた河原沿いの道を歩く。いつもの帰り道。いつものように、土手の下では中学生が野球をしている。でも今日はその脇を猫が散歩をしていた。まだ子供だ、可愛い。
「危ない!!」
突然聞こえてきた声の方を向くと、野球のボールがこちらに飛んできていた。
鞄を手から離し、急いでトンファーを顔の前で構え、衝撃に備える。
ボールよりも速く目の前を風が走った。
野球ボールが地面に落ちて、皮靴に当たった。
それを見てから、足元から視線を上げる。
空間を切るようにして突然現れた男は、見慣れた制服を着ていた。
雲雀は訝しげに眉を顰め、目の前の男を見る。
「大丈夫か?」
そういって、男は雲雀の方へ振り返った。
「別に…自分でよけられたけど」
外方を向き、素っ気なく答える。
「そっか、それなら良かった」
その言ってすごく柔らかく笑った。
ざざっと風が駆け抜ける。
目が、耳が。そして声が。
気がついたら、彼の腕を掴んでいた。
腕を見ると、壊れた腕時計がはめられていた。それを見つめた後、雲雀ははっとしたように顔を上げる。この腕時計はボールを受け止めた時壊れたものだ。
何か言わないと。何を言えばわからなくて、ただ腕を握りしめて黙っていた。それを見て、彼は苦笑した。
「時計は気にすんなよ。雲雀が無事ならそれでいいって」
そういって雲雀の頭を軽く撫でた。
雲雀は彼の腕を離し、撫でられた箇所を触った。
そして、背を向けた彼に声をかける。
「ねえ、なんで名前知ってるの?」
こちらの問いかけに反応して、男はこちらを振り返り、首をかしげた。
「お前すっげぇ噂になってんの知らねえ?」
「さあ?他人に興味はないから」
「はは、気に入らない奴はトンファーで滅多打ち。怖くて風紀委員以外誰も近寄らない。けど、
近くで見たら結構可愛いのな」
そういって照れたのを隠すように笑った。
さっき読んだ少女漫画に出てきた笑顔だ。 ふわふわした気分になるそんな笑顔。
「じゃあな、雲雀」
そういって、足下に落ちていた野球ボールを拾い、土手下へと降りていった。
「待ちなよ。君、名前は…」
雲雀の呼び止めに、斜面で足に力を入れて立ち止まる。そして少し上を見てから、こちらを向いた。
「山本武。一年っす」
「そう。この借りはいつか返すよ」
その言葉を聞いて山本はまた笑った。
そして何か思いついたような顔をしてから、こちらに何かを飛ばしてきた。
両手で挟むようにキャッチする。
「それやるよ」
手のひらをそっと開く。
包装されたチョコレートだった。コーヒーヌガー、チロルチョコの中で一番まずい奴だ。
顔を上げるともう山本はいなくなっていた。
歩きながら口の中でチョコレートを転がす。口の中が熱くてすぐに溶けてなくなった。
空がオレンジ色に何層にも重なって綺麗なグラデーションになる頃、応接室の窓から山本の姿を見つけた。野球のユニフォームを着てグランドを走っている。
偶然見つけてから、暇がある時はその姿を目で追いかけるようになった。
山本武。一年で野球部のレギュラー。それ以外の情報はない。
汗。フォーム。赤くて、キラキラ。
興味じゃない。ただあの日の笑顔、あの声を感じたいんだと雲雀は思う。
山本が急に立ち止まり、汗を拭いながら顔を見上げた。
そして、こちらを見てかちりと視線があった。あの日以来初めて目が合った。
けれども、山本は電信柱に止まった雀と目が合ったみたいにまた、何でもないように走り出した。
山本にとっては雲雀は雀や鳩と同じような存在なのかもしれない。 ただそこに存在しているだけ。
唇が震えた。期待していたんだ。あの日の笑顔をもう一度見せてくれるって。
近くにあったカーテンをぎゅっと、きつく握りしめた。
山本武。僕は君を好きなのかもしれない。
昨日から今日になって、雲雀は体育館裏でタバコを吸っていた生徒を咬み殺していた。
イライラする。男子生徒の腹にトンファーを思いっきり食い込ませる。上手く鳩尾に入って、男子生徒は九の字に折れ、そのまま地面へと崩れた。
ははっ。人の歪んだ顔はおもしろい。やっぱり、ケーキ食べてる雲雀より、誰かを殴ってる方が自分らしい。
男子生徒のワイシャツを掴み無理やり立たせ、最後の一撃を顔に落とそうとした瞬間 後ろから叫び声が聞こえた。
「ヒバリッ!!」
一週間ぶりだ。あの日からずっと待っていた声。心臓を直接掴まれたように胸が痛む。
息を吐いてから、男子生徒のワイシャツを離し、彼の方へ振り返る。
けど、あの日の笑顔はなく、ただその端整な顔を歪ませて地面に倒れている男子を見ていた。
「どうして…」
山本は眉間に皺をよせ、零すように口に出した。
「僕は…」
こんな状況で何を言うつもりなんだろうか。自分でも可笑しくなって、ふっと笑った。
「雲雀…」
そういって山本は目を潤ませながら雲雀の肩を強く掴み、見詰めた。
「ヒバッ…ぶはっ!」
掴んでいた肩を離し、思いっきり吹き出す。
そして、腹を抱えて小刻みに震え出した。
唾がかかった。人がせっかくシリアスになっていたのに。
「ねぇ…」
すっかりしゃがみ込んでしまった山本の頭に話しかける。顔をあげた山本は微かに目許に涙を浮かべて笑っていた。目許の涙を人差し指で拭い、その指でヒバリの口許を指した。
「く、クリームついてる」
そういってまた山本は笑いだした。
さっき食べたシュークリームの生クリームだ。顔が熱が集まるのがわかる。制服の袖で口を思いっきり拭った。
「雲雀、顔赤いぜ」
そう言って激しく笑う姿は、確かにあの日の笑顔だった。
「うるさい!」
トンファーをお見舞いしてやった。
ああ、顔がにやけそうだ。
その三日後、山本武は落ちた。
放課後、僕が痴漢を咬み殺している間、山本武は屋上から飛び下りて死んだ。
自殺だった。
野球の練習中、骨折したのが原因らしい。
挫折も
希望も
劣等感も
何も 知ることなく山本武はいなくなった。
人は、飛べないんだ。
覚束ない足取りで何も考えずに歩いていたら、いつの間にか彼と出会った河原にきていた。
「何泣いてんだ?」
泣いてる?頬を触ると、濡れていた。
頬を手で拭ってから、声がした方へと振り返る。
そこにはスーツを着た赤ん坊が立っていた。
その赤ん坊がニヤりと笑い、銃を構えた。
そして、今その銃の引き金がひかれる。
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好き勝手書いた奴。
コーヒーヌガーはおいしくないと思います。
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