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みんなに好かれる。誰にでも優しい。スポーツ万能。そして、いつも笑顔。
山本武という人間を換言すれば、好青年という言葉が驚くほどしっくりくる。例えば、女子が理想とする彼氏像というものに山本はよく当てはまっていると思う。頭があまり良くないという欠点さえ、人懐こいと感じられる。
けれども、そのような青年は果たして、幸せなのだろうかと思う。
汗は。爽やか。
血は。真っ赤。
応接室からグランドを駆け回る野球部員が見える。雲雀は一人の青年を目で追っていた。野球なんておもしろいのだろうか。四角形を走り回っているだけにしか見えない。溜息を吐いてから、下に向けていた視線を空に向ける。
最近雲雀の周りは目まぐるしいほど変わった。素晴らしく強い赤ん坊。不思議な草食動物。家庭教師と名乗るイタリア人。退屈と呼ばれる時間は日を追うごとになくなっていった。
そして、その中心に親しくしている山本という男を見ていると、野球という“スポーツ”で本当に満足しているのかどうか疑問に思うのだ。もしもあの立場が雲雀だったならば確実に満足していないのだ。
血に餓えた日常。青春というべき非日常。
あの長髪の男を倒した時、彼は確かに鋭い牙を持っていた。
けれども、けれども、日の落ちたグランドで一人、素振りをしたり、昼休みに学校を抜け出して牛乳を買いに行くような、そんな山本武が雲雀は好きなのだ。
「やはり、山本武。君はあの時死ぬべきだった。」
そう一言こぼしてから、雲雀は振り返れると、ドアの所に先ほどグランドを走っていた野球少年が笑いながらに立っていた。いつもより二十分遅い。
「今、部活終ってさ」
そう言いながら、ソファーに腰を下ろした。肩で息をしている。走ってきたのだろう。
「山本武、君はあの日、屋上から落ちて死ぬべきだった」
そう言いながら、雲雀は山本の膝の上に向かい合うように乗っかり体重をかける。苦しそうに歪んだ顔を両手でそっと包んで話を続ける。
「沢田綱吉はいつか君を殺すよ」
すると。顔においていた手をはずし、雲雀が少し重心を後ろにかけると、山本はふっと息を吐き、そしていつものように柔らかく笑った。
「ツナは俺の命を救ってくれたんだぜ?」
「でも、いつか君を殺すよ。
やっぱり、君はあの日屋上から落ちて死ぬべきだったんだ」
そう耳元でゆっくりと囁くと、山本はへへっと一度笑って、そして無表情になった。
ああ、この顔、この顔だよ。この生きた魚みたいな目。
そうか、山本武はあの日一度死んだんだ。そして、この間の戦いの時にまた死んだ。好青年、山本武死亡。二回も、二回も死んだよ。
本当、馬鹿だね。
生きた伸びたから、こんな顔が出来るようになってしまったんだ。
ずっと野球をして笑ってればいいのに。そう自分だけにしか聞こえないように呟いた。
「ん?雲雀なんか言ったか?」
軽く首を振って山本をじっとみた、いつもみたいに何も考えてない顔して首を傾げてる。
「ねえ、野球は捨てないでね」
「おう、俺の夢は雲雀を甲子園に連れて行くことだかんな!」
「馬鹿」
「それじゃあ、キスでもしようぜ。俺だけのエース。」
「黙れ、荒青年。」
沢田綱吉はリミッターを外すんだ。沢田自身もその周りの人間のリミッターも。その瞬間初めて山本はそのリミッターを外し、好青年という枠から出た。これから山本武はどんどんその枠から遠のいて、何度も死んでいく。それまで愛してあげようと雲雀は思う。
さようなら、僕の好青年。
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自殺する山本好きなんです。屋上ダイブの山本はいつもの3割増しぐらいかっこいいです。
だから自殺ネタをやたら使いたくなってしまうの。
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