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 出来る限りの力を込めて椅子を床に投げつけた。大きな音を立てて椅子が転がって、床に傷がついた。抉ったような結構目立つ傷。
 それなのに、雲雀はなんでもないように窓から入ってくる風を気持ちよさそうに受けていた。
 雲雀じゃないようなその姿に虫酸が走って、イライラして、釈然としなくて、この感情を解放させるように、椅子を床に叩き付ける。椅子の足を持って何度も床に降り下ろす。ガン、ガンと。
壊れてしまえばいい。
 いつしか床を傷つけることに必死になっていた。
 そして、少しだけ気を抜いた瞬間 、椅子が手から滑り床に落ちた。

 膝に手をついて、荒れた息を整えながら雲雀の方を見ると、鋭い眼がこちらに向けられていた。そして、今までずっと閉じられていた口が少しだけ開いて言葉を零した。

 「……うるさい」

 そして、また目を閉じて、窓から流れてきた 国歌を聞いていた。

   違う。こんなの違う、雲雀じゃない。

 釦が上まで綴じられた学ランも、胸に飾られた造花も、手にしている黒い筒も認めたくなかった。

 「なあ、卒業するなんて嘘だよな?」
   雲雀は並中の妖精で、学校が休みでも座敷わらしみたいにずっと学校に居てさ、妖怪みたいだってみんなに怖がられてさ、それから、それから雲雀は並盛が大好きなんだ。それで、それで、俺はここにいればいつでも雲雀に会えるって思っててさ、それって馬鹿みたいじゃん。

「イタリアに行くなんてなんかの間違いだよな?」

 小僧に誘われたって嬉しそうにこの前話してたよな。しばらくディーノさん所に世話になるんだってツナに聞いたよ。
 嫌だ。嫌だよ。

 「並盛嫌いになっちまったのかよ!?」

 俺はこんなに、こんなにも声を張り上げて怒鳴ってるのに、雲雀はただ目を硬く閉じて黙ってた。

   「雲雀のバカ、アホ、ハゲ、非常識、石頭、バカ力、戦闘マニア、ドS、不細工・・・・・・」
 頭の中で雲雀を怒らせるような言葉を必死で探した。逆鱗に触れるようなそんな言葉を。けど見つからなくて、ただ唇を噛み締めた。
 そんな山本を雲雀は一瞥してから、ふらりと動いた。

 「・・・・・・・最後、だからね」
 そう呟いて、窓際からゆっくりと離れた。

 最後って何だよ。嫌だよ、まだチューしかしてないじゃん。俺まだ童貞だし。


 なんで、なんで届かないんだよ。

 足元に転がった椅子を手にして、そして

 椅子を窓に投げつけた。
 派手な音を立てて、窓が割れてカーテンが強くなびいた。


 さすがにこれは頂けなかったのか、殺意のこもった、刺すような目に捕えられる。
 痺れた空気が部屋中に感じられた。冷汗が背中を流れた。

 出せよトンファー、草食動物って咬み殺せよ。

   けれども、凍ったような空気はふつりと切れ、雲雀は俺の脇をすり抜けて教室の扉に向かった。
 ふるふると震える口の中で言葉を反芻させる。なんで、なんで。

「…何でなんだよ!!」


 俺は、こんなに、こんなに雲雀のこと思ってるのに。思ってるのに。

 雲雀の肩を掴んで床に押し倒した。

 好きだよ、雲雀。



 学ランに咲いた赤い花を剥ぎ取った。
 そして、学ランの釦を上から外しYシャツをたくしあげて、胸元に口をつける。ちゅっと音を立て口を離すと紅い痕をついた。
 それから、胸元から腹、脇腹へとだんだん下の方へ口づけていく。

 ふっと、体から唇を離し雲雀をちらりと見た。雲雀は何も言わずにただ、呆然とこちらの行為を他人ごとのように見ていた。

 「・・・なんか言えよ」

 「・・・・・・」

 死体を抱いてるみたいだった。まだ軽蔑してくれた方がましなのに。

 雲雀のベルトを外し、スラックスと下着を足から抜き去り、太股に舌を這わす。そして、質量の増した雲雀の性器を口に加えて吸いつき、軽く噛んだ。その瞬間、白濁色の液が溢れ出た。
 
 腕で顔を隠して唇を噛み締めている雲雀の額にキスをした。
 「・・・ごめん」
 出来るだけ優しい声で囁いてから両足を持ち上げ、肩に担いだ。
 そして、滴る液を手で絡め取り、後孔に指を滑り込ませる。水音を立てるそこから指を抜いた。

 それから、熱を持った自分自身をゆっくりと雲雀に埋めながら、前に見たAVを思い出す。

   今、あれと同じことをしているんだ。テレビの中の女優はすごい気持ちよさそうにしてたこの行為。
 なあ、何が気持ちいいのかな。俺今さ、全然気持ち良くねえよ。同じようにしてみたけど、全然楽しくなくて、むしろむしろ虚しい。
 きっとセックスってのは、大人がするから気持ちいいんだ。
 だって俺らまだ、中学生じゃん。

 全部入りきった時、閉じていた雲雀口から甘い声が漏れた。

 「・・・っあ」

 「雲雀…」
 気持ちいい、ってそう訊こうとした瞬間、耳元に聞き慣れた曲が届いた。
 ああ、この歌詞、桜の花びらと共に窓から舞い込んできた曲は雲雀が大好きな曲だった。

 「並中校歌・・・・」

 雲雀は俺とのこの行為に感じたわけではなくて、この曲に反応しただけだった。
 そう思って、涙が溢れたて、雲雀が揺らいで見えなくなった。もうなんだかわかんなくなって、びびって委縮した。
 ぼたぼたと、雲雀の体に涙を零した。

 「雲雀、ごめん。ごめん雲雀。いかせられない」

 「・・・・っ、泣く・・・なら、抱くな」

 揺らいだ視界に雲雀の手が映って、頬を撫でられた。
 「…っ…君、なにもかも突然なんだよ」
 確か、抱きしめた時も、頬にキスした時も、告白した時も、自分の感情だけがいつも先走ってた。雲雀が何を考えてるか知ることなく、ただただ、感情のまま行動した。いつも俺の目の前には雲雀がいて、ずっと追いかけていた。

 「…なあ、雲雀、ごめん。…やっぱ、俺さ、お前のことすっげえ好き、だよ」

 再び熱をこもった自身で奥をついた。それから、それから、ああ、射精した。

 さよなら童貞。
 「・・・・っんあ!」
 雲雀の口から小さく嬌声が漏れた。そして、真新しい傷のついた床を愛おしげに撫でて、気を失った。

 やっぱり、雲雀は並盛が好きなんだって、そう思う。
 きっと、小僧よりも、ハンバーグよりも、そして    俺よりも。
 


 独特な臭いを嗅ぎながら床に寝そべって、目を閉じた。
 きっとこれが雲雀との最後の思い出だ。
 





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せめて、カーテンぐらい閉めようぜ山本!(笑)

初めてエロ書いた。なんだかエロくない。もう手探り状態で書いた。・・・とても難しかった。今度書くときはがっつりエロにしよう。うん。
そして、書きながら高校の卒業式で校歌聞いて号泣したのを思い出しました。ダサいのにすっげえ良い曲に聞こえる卒業ミラクル。


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2009.2.25